アロマテラピーの基礎
アロマとは芳香のこと、テラピーとは治療のことでアロマテラピーとはエッセンシャルオイル(精油)を使った芳香療法のことになります。
※アロマテラピー基礎編のプレゼン形式YouTube動画を末尾に掲載してあります。
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(1)アロマテラピーの始まり
歴史的には様々な国で宗教儀式に芳香剤として使用されてきました。
日本でもお香として儀式や衣類の香り付けなどに使用されてきました。
しかし、アロマテラピーが芳香療法として確立されたのは近年になってからのことです。
フランス人調香師のモーリス・ガットフォセが1937年「アロマテラピー芳香療法」を刊行しました。
その後イギリスで精油をオイルで希釈してマッサージを行う療法が広まり、現在では様々な方法でアロマテラピーが行われています。
(2)エッセンシャルオイルとは
植物の花、葉、果実、種子、根、樹脂などから抽出した精油成分です。
エッセンシャルオイル=精油
特徴は独特の芳香があり揮発性で水に溶けにくい性質があります。
エタノールやオイルには溶けやすいのでこれらを使って必要な濃度に希釈することができます。
エッセンシャルオイルにはそれぞれ異なる性質があり、それを上手に活かす事が重要になります。
体質やその時々の身体の状態も考慮して精油を選びます。
ただし、体質に偏りがなく、香りを楽しみたい時は、好みの精油を上手にブレンドすればフレグランスとして使用できます。
(3)エッセンシャルオイルの用法
肌に使用する場合は刺激があるのでキャリアオイルで1~2%程度に希釈して使用します。(5ccのオイルに1滴が1%に相当します)
脂性肌にはグレープシードオイル、乾燥肌には皮膚の保護保湿作用に優れたホホバオイルがおすすめです。
・エッセンシャルオイルもキャリアオイルも肌に合わないとアレルギー反応を起こすことがあります、腕などの目立たない所に少量のパッチテストをしてから使用するようにします。
(塗布後24時間で発赤、かゆみがない事)
・ベルガモットなどの柑橘系は強い紫外線で炎症を起こすことがあるので注意が必要です。
・基本的に妊婦、幼児への使用は避ける必要があります。
アロマテラピーの使用例.1
芳香浴:一番簡単な方法はエッセンシャルオイルを直接ハンカチ、ティッシュなどに1~2滴垂らして自然に拡散させる方法です。部屋全体に香りを拡散させたい場合はアロマポット、ディフューザー、加湿器などを使用すると効果的です。
アロマテラピーの使用例.2
入浴:エッセンシャルオイルは水に混ざりにくいので1回5~6滴を粗塩(大さじ3)、コーヒーミルク(液状5cc)、キャリアオイル(10cc)、ウオッカ(15cc)などに混ぜてからお湯に入れると違ったタイプの入浴剤が楽しめます。
アロマテラピーの使用例.3
吸入:マグカップに熱湯を入れ、エッセンシャルオイルを1~2滴垂らして鼻から蒸気を吸入します。
(やけどに注意)
アロマテラピーの使用例.4
湿布:洗面器に熱めのお湯を入れ、エッセンシャルオイルを2~3滴、垂らした中でおしぼりを軽く搾って患部に当てます。
皮膚からの吸収と揮発成分を鼻から吸入することで心理的効果も得られます。
アロマテラピーの使用例.5
オイルマッサージ:一般的に、キャリアオイル10ccにエッセンシャルオイル2滴(1%)で患部をマッサージします。マッサージ効果に加え、皮膚からの吸収と揮発成分を鼻から吸入することで心理的効果も得られます。
アロマテラピーの使用例.6
ハウスキーピング:無水アルコール20ccにエッセンシャルオイル1cc(20滴)を溶かし水を加えて100ccにします。ハンドスプレーに入れて室内への拡散やトイレ、キッチンなどの嫌な匂いを抑えます。
アロマテラピーの使用例.7
アロマクリーム:プロペト(※ワセリン)50gにエッセンシャルオイル10滴(1%)をシリコンのヘラや乳鉢を使ってよく混合します。ビタミンEを多く含む小麦胚芽油を少量(5〜10%程度)加えると血行促進と酸化防止効果があります。
※プロペトとワセリンは効果に変わりありませんがプロペトの方がベタつきがなく、使用感が良いです。
アロマテラピーの使用例.8
アロマ化粧水:無水アルコール10ccにエッセンシャルオイル10滴を溶かし、グリセリン5ccと水を加えて100ccにします。
※無水アルコールとグリセリンは好みに合わせて増減すると使用感が変わります。
アルコール濃度が低いと腐敗しやすいので冷蔵庫で保管します。
(4)エッセンシャルオイルの効果
嗅覚による精神への効果:臭覚だけは大脳皮質の思考フィルターを通さずに本能的行動を支配する大脳周辺系に伝達されます。
皮膚吸収による身体への効果:脂溶性のエッセンシャルオイルは皮膚から吸収され患部に到達し、血管を通じて全身を巡り、肝臓で代謝されます。
吸入による気管支・鼻腔粘膜への効果:鼻から吸入されたエッセンシャルオイルは鼻腔・気管支の粘膜に直接作用し、鼻閉、袪痰、鎮咳等の作用を現します。
(5)エッセンシャルオイルの成分
天然物であるエッセンシャルオイルは複数の有効成分を含んでいます。
モノテルペン類:抗菌作用、抗ウルス作用、利尿作用、免疫活性作用があり、ピネンには(ローズマリー、ジュニパー、パイン)、ミルセンには(レモングラス)、リモネンには(柑橘類)などがあります。
セスキテルペン類:抗炎症作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、鎮静鎮痛作用があり、カリオフィレンには(イランイラン、ラベンダー、マージョラム、ローズマリー)、カマズレンには(カモミール、フランキンセンス、レモン、パチュリー)などがあります。
アルコール類:抗菌作用、抗ウイルス作用、精神神経作用があり、ゲラニオールには(ゼラニウム、パルマローザ、ローズ)、リナロールには(ラベンダー、ネロリ、タイム、コリアンダー)、シトロネロールには(ローズ、ゼラニウム、ユーカリ)、メントールには(ペパーミント)、ネロールには(ベルガモット、ネロリ)、テルピネオールには(ベルガモット、ネロリ、ゼラニウム、マージョラム、ユーカリ)、テルピネン-4-オールには(ティトリー)、ファルネゾールには(カモミール、ローズ、パルマローザ、イランイラン)、α-サンタロールには(サンダルウッド)などがあります。
フェノール類:抗菌作用、免疫活性作用、精神神経作用があり、チモールには(タイム)、オイゲノールには(クローブ、シナモン、イランイラン、ローズ)、アネトールには(フェンネル)、サフロールには(カンファー)などがあります。
アルデヒド類:鎮静作用、抗炎症作用、抗菌作用、強壮作用、血管拡張作用があり、ゲラニオールには(レモングラス、レモン、ライム、メリッサ)、シトロネラールには(レモングラス、レモン、ユーカリ、メリッサ)、桂皮アルデヒドには(シナモン)などがあります。
ケトン類:粘液溶解作用、鎮静鎮痛作用、消化促進作用があり、ジャスモン酸には(ジャスミン)、フェンションには(フェンネル)、メントンには(ゼラニウム、ペパーミント)、カンファーには(ローズマリー)などがあります。
エステル類:抗痙攣作用、鎮静作用、抗菌作用、抗炎症作用があり、酢酸リナリルには(クラリセージ、ベルガモット、ラベンダー、ネロリ)、酢酸ゲラニルには(クラリセージ、ベルガモット、ラベンダー、ネロリ)
オキシド類:精神高揚作用、粘液溶解作用、祛痰作用があり、ユーカリプトールには(ユーカリ、ローズマリー)などがあります。
(6)エッセンシャルオイルの性質
1. ノート分類
トップノート:先に香る揮発性の強い精油成分のことでフレッシュで爽やかな香りで、一般的に嗜好性の高い香りです。オレンジ、ラベンダーなどのシトラス、ハーバルな香りが多いです。
ベースノート:後に香る揮発性の弱い精油成分のことで、いつまでも残る香りでフレグランスとして使用する場合は重要です。サンダルウッド、フランキンセンスなどのウッディー、バルサムな香りに多いです。
ミドルノート:中間に香る中間的な揮発性の精油成分のことで、香りの中心的な部分で重い香りを補正して優雅な香りにします。ジャスミンやローズなどのフローラルな香りが多いです。
2. 香質の表現
香調をノートと言い、香質をあらわすフローラルの後に付けてフローラルノートとなります。
シトラス:柑橘系の香りで新鮮で爽やかな香り
グリーン:緑の葉を想わせる青臭い香り
ミンティー:フレッシュで清涼感のある香り
ハーバル:ラベンダーなどの薬草を想わせる香り
アロマティック:フェンネルなどの香草を想わせる香り
スパイシー:刺激的な香辛料を想わせる香り
フローラル:甘く華やかな花を想わせる香り
バルサミック:樹脂の甘く柔らかな暖かみのある香り
アンバー:クラリセージなどの甘く重厚な香りです。
3. 香りの強度
揮発指数:1gの精油を浸透させたにおい紙を25度で1時間放置し、蒸発したミリグラム数で、数値が高いほど室内に蒸散した量が多いことになります。
強度指数:アペルがウェバー・フェヒナーの法則を考慮して導いた匂いの強度指数です。シトラールを100% 40% 16% 6.3% 2.5%の希釈溶液にした標準サンプルを作り、匂いの強度を5, 4, 3, 2, 1の5段階としました。これと同様に希釈した試験サンプルと比較して強度指数を決定しています。
香りの感じ方は個人差がありますので、必ずしもこの法則が当てはまるわけではありません。
ブレンドには少量の強度指数の高い精油に強度指数の低い精油を足していくと失敗を少なくできます。
4. 香りの強さとブレンド
ブレンドファクター:ロバート・ティスランド氏が考案したもので、精油は1から12に分類された1の香りが一番強く、順に弱くなります。
数値は香りの強さをあらわしたものですが、エッセンシャルオイルをブレンドする時の敵数に置き換えてブレンドの目安にすることも出来ます。
例えば、ローズマリーとレモンに応用すると、ローズマリー3:レモン9ですので、ローズマリー1滴にレモン3滴のブレンドとなります。
ただ香りには個人差がありますのであまりブレンドファクターに頼りすぎると失敗します。
(7)ブレンドの目的とポイント
1.フレグランス
相性の良い調合すると良い香りになるエッセンシャルオイルを選びます。柱になる香りを選び調和し支え合うようなブレンドを選びます。
2.治療
エッセンシャルオイルには様々な効能があります。その中から目的にあったものを選び、効果を高める相性の良いブレンドを選びます。例えば、ユーカリ、パイン、ティトリーなどは肺機能を高めて呼吸を楽にします。
3.スピリット
スピリットはこれらの目的の中でも重要な役割を果たします。切り口はいくつかありますが、東洋医学理論を応用した個々の体質に合わせた精油を選びブレンドします。ブレンドはシンプルなほど効果が発揮されますので、3種類程度にとどめるのが効果的です。
(8)東洋医学とアロマテラピー
ガブリエル・モージェイ著のスピリットとアロマテラピーで、東洋医学の視点から感情と精神のバランスを取り戻す精油の使い方が紹介されています。
東洋医学の五行説に注目し、人の藏府や感情・精神など全てを五つの「木」「火」「土」「金」「水」にわけ、これらの過不足が疾病を引き起こすと考えます。健康状態とは気・血が滞りなく流れて精神が安定した状態を言います。
治療には足りないものは補い、多過ぎるものは取り去り、滞っているものは流します。
アロマテラピーでは体質に合わせ、五行に対応した精油を使用することで偏りを整えてバランスを取り戻します。
陰陽説
陰と陽は、お互いに補い合う関係で正反対の性質を現しています。例えば熱は陽で、寒は陰、燥は陽で、湿は陰になります。身体に対応すれば、陽は熱の、陰は水の尺度とも言えます。
五行説
五行は人の藏府や感情・精神など全てを五つの「木」「火」「土」「金」「水」にわけ、これらの過不足が疾病を引き起こすと考え、足りないものは補い多過ぎるものは取り去り滞っているものは流すことでバランスを取り戻します。
五行を人の臓腑に割り当てると、肝は「木」、心は「火」、脾は「土」、肺は「金」、腎は「水」に配当され、「魂」、「神」、「意」、「魄」、「志」が精神活動を受け持ち、怒り、喜び、思い悩み、悲しみ、恐れの感情表現として現れます。
セルフメディケーション
セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な心身の不調は自分で手当てすること」と、W H O(世界保健機関)は定義しています。
セルフケアーの手助けとしてのアロマテラピーの使用は芳香浴、アロマポット、ネブライザー、アロママッサージまたアロマクリームを手首につけるなどがありますが、ヨーガ、太極拳、瞑想などのリラクセーション、食べ物では薬膳などと組み合わせることで効果を最大限に発揮する事ができます。
アロマテラピーは短時間で効果を発揮することもありますが、長い時間を経て起きた身体の失調は治癒に時間がかかるものです。焦らず、ゆっくりと様々な可能性を試してみてください。